医療機関(病院,診療所,助産所)で医療行為を受けた家族が突然亡くなったとき,なぜ亡くなったのかを知りたいと思うご遺族の気持ちは当然の感情だと思います。
このようなとき,通常は医療機関から,経緯や死亡の原因について十分な説明を受けて納得をすることになると思います。
反対に,説明が無かったり説明を受けても納得できない場合には,訴訟(民事や刑事)という手段によって事実や責任を明らかにする方法があります。しかし,これらの手続は真相究明を求める遺族にとっても,訴えられる医師や医療機関側にとっても,負担感の大きい制度です。
そこで,医学界や患者団体からの要請を受けて,2015年10月1日から医療事故調査制度が始まりました。
この制度では,医療機関における医療によって,予期しなかった死亡や死産が発生した場合に,その医療機関はその医療事故についての調査を行わなければならないこととなっています(医療法第6条の11第1項)。
調査の対象となる医療事故は,医療法,医療法施行規則で定められており,厚生労働省も通知やQ&Aで詳しく解説していますが,医療機関における多くの死亡事案が対象になるものと理解されています。
制度の詳細については,以下のページをご参照ください(概要はこちら)。
○厚生労働省・医療事故調査制度について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061201.html
○日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)
https://www.medsafe.or.jp/
2 事故の調査は必ず行われますか?
医療機関(病院,診療所,助産所)の管理者は,調査の対象となる医療事故が発生したときには,速やかにその原因を明らかにするための必要な調査を行わなければならないこととされています(医療法第6条の11第1項)。
しかし,この調査は医療機関の管理者の判断によって開始されるので,もし死亡事故が発生しても,その管理者が医療事故に当たらないと判断した場合には,調査が行われないこととなってしまいます。
そこで,医療事故に当たるかどうかを判断するに際し,医療機関に対して支援を行う各支援団体等連絡協議会において,統一的な見解について検討することとなっています。
また,医療機関は,遺族から医療事故が発生したのではないかという申し出があった場合に,医療事故に該当しないと判断した場合は,遺族に対してその理由を分かりやすく説明することとされています。
ご遺族としては,医療機関に対して,医療事故が発生したのではないか,そのために調査を行う必要があるのではないか,という申し出をすることが考えられます。しかし,医療事故調査の対象事案なのかどうかや,どのように申し出をすればよいのかだけでなく,その事案を解決するためにはどのような手続きを選択すればよいのか,どのように進めればよいのかという点については,十分に検討をする必要がありますので,迷ったときには弁護士にご相談ください。